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見附市今町にある商店街の一角に、老舗のお茶屋である「ばん茶や」があります。
店先には、だるまやかえる、招き猫など、色とりどり、様々なモチーフの人形が並んでいます。
すべての作品に共通するのは、ホッとする素朴で愛らしい表情で「今町べと人形伝承会」の代表である、藤田久子さんが製作したものです。
今町では明治から大正、昭和の戦後まもなく「べと(土)人形」が造られており、子供たちの遊び道具として親しまれていました。
しかし、時代の流れとともに新しい素材の玩具が流通し、後継者も途絶え長年の間、幻の人形となっていました。
その「今町べと人形」が平成の時代に復活し、よみがえったのです。
復活の背景に2004年に起きた7.13水害があります。
信濃川の支流である刈谷田川が大雨により氾濫したことで、周辺地域である今町は大きな被害を受けました。
復興に向けたまちづくりの為に、藤田さんの夫である潤治氏を含む住民有志は『元気のあるまち 話題のあるまち 子どもたちが誇りにできるまちづくり』について話し合う「地域復興調査研究協議会」を立ち上げます。
その中で、戦後間もないころまで作られていた郷土人形の「今町べと人形」の復活が上がりました。
藤田さんは地域復興調査研究協議会の副会長でもある夫・潤治氏に「今までの経験が役立つかもしれないぞ」と言われ、まちの話題づくりの為「今町べと人形」の復活に挑戦します。
土人形作りは未経験でしたが、若いころから陶芸や絵画・版画の経験があり特に人形作りに欠かせないべと(土)と仲良くできたのは、陶芸の経験があったからだそう。
多彩な趣味に挑戦してきた人生の集大成として「べと人形」があったのかもしれないと当時を振り返ります。
べと人形復活への挑戦を始めてから約1年後の2008年、藤田さんが63歳の時に復活に協力してくれる有志を募り、「今町べと人形伝承会」を発足します。
今まで誰も経験のない特殊な作業の為、趣旨に賛同してくれたのはわずか4名でした。
手探りの中で進められるべと人形作りでしたが、地域を活性化させるために会の活動も認められ、県から5年間の活動資金の補助を受けることとなります。
しかしながら、資金面での援助はあるものの、作り方を教えてくれる人は誰もおらず、唯一残る日本郷土人形研究会発行の「今町人形」という文献を頼りに日々人形作りに励みました。
中には「年寄りにできるのか」など心ない言葉もあったそうですが、藤田さんにとってはそういった声こそが、「何が何でも作って見せる、頑張るぞ!」というエネルギーになったといいます。
苦労の絶えない中、今町べと人形伝承会のゴールとして掲げたのが、蛇行を解消した刈谷田川の跡地にできる新たな道の駅「パティオにいがた」で今町べと人形を販売することでした。
販売にあたり、藤田さんが心に決めていたのは「売れる人形を作ること」でした。
専用の型を用いて作る人形は、造形はもちろん人形の命といえる顔の絵付けも全てが手作業です。
販売するためには、常に同じ品質でたくさん作れる技術が必要となります。
中には挫折してしまう人もおり、藤田さんは自身が納得し、販売できる作品を作れるようになるまで5年ほどかかったそうです。
今町べと人形伝承会の並々ならぬ努力の結果、2013年8月「パティオにいがた」のオープンに合わせて、復活した今町べと人形の販売がスタートします。
販売が始まると、多くのテレビや新聞に取り上げられたことで、県内各地から反響が寄せられ、当初の目的であった「今町の話題づくり」に大きく貢献し、ようやく目的を達成できました。
2020年9月取材に伺った際、藤田さんは多忙を極め、毎日のようにべと人形作りに励んでいました。
今年は世界中に影響を及ぼしている新型コロナウイルス、そのコロナ禍の中で話題となった疫病を退散させてくれる妖怪「アマビエ」をモチーフにしたべと人形の販売をスタートし、大きな反響を呼びます。
現在までなんと500体以上を製作したそうです。また、全国誌である「BRUTUS(ブルータス)」 に2か月に渡り「みやげもんコレクション」として紹介され、全国の愛好家からも注目を集めます。
中には沖縄からの注文もあり、海を渡ったアマビエもいるようで、全国の皆さんから人形を通した交流の輪が広がってうれしいと笑顔を見せていました。
75歳を迎える藤田さんは「人生は一度きりしかない、悔いの残らないようにしなくちゃ!」と言います。
それはべと人形作りに全力で取り組み、逆境も自分自身のパワーに変えて取り組む努力があったからこそ。
時代は平成から令和を迎えましたが、ますます注目の集まる「今町べと人形」はこれからも「地域の宝」として多くの人に親しまれていくことでしょう。
どまいちでは特に人気の高い「今町べと人形」を厳選してお届けします。
ぜひその愛らしい表情と、土のぬくもりを感じて癒されてみてはいかがでしょうか。
責任者 藤田 久子
〒954-0111
新潟県見附市今町1-4-12
Tel.0258-66-2249
Fax.0258-66-2249